構造変化に直面する小さな会社

この記事は、「強み経営シリーズ」第二弾『小さな会社の経営計画』として出版することを前提に書いています。この経緯については

次の著作の執筆を開始します
書籍を執筆する前に決めておくべきこと

をお読みください。

構造変化に直面する小さな会社

2014年6月に成立した「小規模企業振興基本法」に基づき、第1回目となる「小規模企業白書(2015年版)」が2017年7月に発表されました。この白書の対象となっているのは、常時使用する従業員の数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業者と会社です。「小規模企業」には個人事業者を含みます。「小規模企業」というといかにもお役所らしいので、この本のタイトルでも「小さな会社」としていますが、個人事業者も含んでいます。

この白書の冒頭に、「小さな会社」が直面している状況が的確にまとめてありますので、それを参照しておきます。なお、「小規模企業白書(2015年版)」は、書籍として販売していますが、インターネット上で全文が公開されており、無料で読むことができます。

まず、小さな会社のわが国における役割を次のように述べています。

全国385万者の中小企業、中でもその9割、334万者を占める小規模事業者は、地域の特色を生かした事業活動を行い、就業の機会を提供することにより、地元の需要に応え、雇用を担うなど、地域経済の安定と地元住民の生活の向上・交流の促進に寄与する極めて重要な存在である。(「小規模企業白書(2015年版)」)

あなたの会社も「地元の需要に応え、雇用を担い、地域経済の安定と地元住民の生活の向上・交流の促進に寄与」していると思います。次に白書では、小さな会社を取り巻く外部環境の変化について書いています。

一方、我が国は、人口減少、高齢化、国内外の競争の激化、地域経済の低迷等の構造変化に直面しており、これらの構造変化は、地域の経済・雇用を支える小規模事業者に大きな影響をもたらしている。(「小規模企業白書(2015年版)」)

こうした構造変化によって、小さな会社でも経営計画の作成が必要になってきたのです。何代も続いている企業で考えてみましょう。あなたのおじいさんの頃は、若い頃に修行して身につけたスキルで一生食べていけたと思います。伝統的な産業では、今でもこのような状況が続いているかも知れません。しかし、多くの産業においては、IT化に代表されるような技術革新などにより、スキルの賞味期限がだんだんと短くなっています。

このため、先代から引き継いだ知識やノウハウだけでは、小さな会社に押し寄せている変革の波に対応できません。あなた自身の新たな工夫、新たな取り組み、新たなノウハウの構築が不可欠なのです。

こうした状況は、経営者を混乱に陥れがちです。人間は外部の状況にうまく対応できなくなると、動けなくなったり、パニックに陥ったりします。

「やらないといけないとはわかっているが、何も手を付けていない」
「見込みがありそうなことにあれこれと手を出しているが、成果に結びついていない」

前者は「動けなくなった」状況に、後者は「パニックに陥った」状況にたとえることができると思います。あなたは大丈夫でしょうか? 動けなくなったりパニックに陥ったりしている状況は、八甲田山中での遭難事故の状況そのものです。ここで思い出していただきたいのですが、アルプス山中で吹雪に遭い「われわれは迷ったとわかって、もうこれで終わりかと思いました」と一時は遭難を覚悟した兵士達は、その後どうなりましたか?

「小規模企業白書」の続きを読んでみましょう。

小規模事業者は、そもそも人材や資金といった経営資源に大きな制約があることに加え、その商圏及び取り扱う商品・サービスが限定されており、価格競争やリスク対応力が弱いため、構造変化の影響を受けやすい。加えて、小規模事業者が抱える問題として、経営者の高齢化が進んでおり、後継者不足等が経営の低迷や廃業に直結している。(「小規模企業白書(2015年版)」)

「軽装備で冬山に挑戦する」というような状況は絶対に避けなければなりません。吹雪に襲われても、安全に帰還できる「地図」が必要です。たとえそれが間違った地図であったとしても。

この記事の内容は、『自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」(強み経営シリーズ2): 小さな会社の経営計画』として、12月20日に出版しました。

自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」(強み経営シリーズ2): 小さな会社の経営計画