ありがとう、Woody!

「誰でも簡単に電子書籍を作る事が出来る」というキャッチコピーで「Woody – ウッディ」というサービスが運営されていました。実はわたしが初めて電子書籍を出版したのが、このWoody からでした。2014年8月20日のことです。その後もう一冊、Woody から電子出版しました。

Woody サービスのコンセプトは、「ブログを書く感覚で、だれでも電子出版が無料でできる」というようなことだったでしょうか。このサービスを利用すれば、無料で電子書籍を出版できたのです!

仕組みはこんな感じだったでしょうか。まず、Woodyに会員登録します。するとマイページ上で本の原稿を入力することができます。まさにブログを書くようなイメージです。8,000文字だったでしょうか。規定の文字数を超えると、「出版できます」という表示が現れ、それをクリックすると、初期のタイトルやサブタイトルなど出版に必要な項目を入力する画面が表示されます。そして、数十書類の表紙テンプレートから表紙を選ぶと、書籍タイトルが表紙テンプレートに反映されます。

ここまで進めば、後は出版するボタンを押せば、Woody側で電子製本して、Amazon kindle、GooglePlayBooks、iBooks から出版してくれます。ここまですべて無料で利用できます。ではなぜ、無料でこのようなサービスを提供できるのでしょうか。

それは、電子書籍が売れた著者側に場合に入る収益の30%をWoody が販売マージンとして受け取る仕組みになっていたからです。たとえば、あなたが500円の価格で自分の本を販売したとします。すると、kindleでは1冊につき35%の175円が収益となります。GooglePlayBooks では260円、iBooks では350円の収入が得られます。これらの収益の30%がWoodyの取り分です。

このようなビジネスモデルが成功する前提条件は、ある程度の価格で売れる電子書籍タイトルを数多く揃えることです。電子書籍で1タイトル何万冊と売れることはまれです。まして、素人というと語弊があるかも知れませんが、商業出版未経験の著者の本が、そうたくさん売れるとは思えません。ロングテール戦略とでもいいましょうか、それほど売れない本でも数多く取り揃えれば、毎月のマージン収入で事業が成り立つと見込んだのでしょう。

このサービスを企画し立ち上げたのは、アメブロを運営しているサイバーエージェントという会社の元社員の方で、社員の独立を応援するとして、Woody の第三者割当増資を引き受け、出資しています。このサービスはもう終了してしまいましたが、Facebook ページはまだ残っているようです。

それによると、2014年3月11日から著者の事前登録がスタートしています。わたしが著者登録する5ヵ月ほど前です。正式スタートは7月7日です。サービスインした後も、システムは継続的に鋭意開発改良が進められていました。少しずつですが改良され、著者にとって使いやすくサイトへと進化しつつあったのです。

ところが、「WOODY利用者のみなさまへ【WOODY運営停止のお知らせ】」という件名のメールが2015年2月16日に届きました。「新規サービス開発のためWOODYの運用を3月1日より停止いたします」とのことです。「えっ」という感じです。出版していた2冊の本は、少しずつですが売れており、電子書籍の可能性に目覚めかけていたところだったからです。これにより、「①新規登録、②新規執筆、③本の投稿」ができなくなりました。事実上のサービス停止です。

ユーザーからの問合せもいろいろあったようです。停止理由に「新規サービス開発のため」とあったためでしょう。「新規開発とは電子書籍に関するものなのか」との問合せに対して「電子書籍とは関連しないものになります。株式会社WOODYとしては電子書籍事業より完全に撤退いたします」との回答が掲載されています。

電子書籍の可能性を感じ始めていたので、「電子書籍事業より完全に撤退」というのは正直ショックでした。7月のサービス開始からわずか7ヵ月での事業撤退です。その後、8月3日に「2015年3月時点で WOODY自体の新規登録、新規出版を停止しておりましたが、このWOODYのサービス自体も2015年9月末を持ちまして停止させて頂く形 となりました」とのメールが届き、Woodyのサイト自体も9月末で閉鎖されました。

想像ですが、事業計画で想定したほどマージン収入が伸びなかったのでしょう。思った以上に素人作家が独力で売れる本を書くことができなかったというのが実際のところでしょうか。出版した本が売れなければ、マージン収入も入ってこない。実際にサービスを提供することで事業計画における重要な仮説が成り立たないと分かったということかも知れません。

いずれにせよ、著者デビューさせていただき、書籍を出版する喜びを体験させていただけたので、Woodyには本当に感謝しております。そして、Woodyによりわたしが体験した書籍を出版し、読者と交流する喜びを広めたい。そのような思いが、エストリビューターとしてのわたしの中にはあります。

ありがとう、Woody!

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