補助金の事務処理負担

事務処理コストはもらう補助金と同額?

わたしは大阪府が実施している補助金(助成金)を長年担当しています。年1回の公募時期には、公募説明会を何度も開催し、補助金の特徴やどのような事業が応募できるのか、どのような費用が補助対象となるか、などをご説明します。応募をご検討されている方については、応募申請書の書き方のご説明やお書きになった申請書の添削なども行っています。

補助対象事業が決定した後は、その事業がスムーズに立ち上がるように、定期的に訪問してさまざまな観点からアドバイスをしています。販路開拓を中心とするマーケティング面、知的財産を含む経営法務面、資金繰りを含む財務面、従業員の採用・育成面、外注先・委託先の管理、協業先の紹介などです。

定期的に訪問している理由がもうひとつあります。それが補助対象経費の適正な支出と、必要な関係書類の整備の支援です。従業員が数十名という規模の会社の場合には、補助金の事務処理についてはあまり心配することはありません。しかし、数人から数十人規模の会社の場合には、この事務処理がかなり負担となります。「補助金の事務処理にかかるコストはもらう補助金と同額だ」という話もありますが、これは少しオーバーですね。やるべきことをきちんとやっていれば、そこまでの手間・コストはかかりません。それでも、毎月訪問してチェックしておかないと、後で取り返しが付かなくなり、補助金がもらえないことになりかねません。

補助金をもらえない失敗例

わたしが担当している補助金や、ものづくり補助金、持続化補助金など、せっかく補助金に採択されたのに、補助対象経費と認められなかったり、あやうく補助金がもらえなくなるところだった失敗例をいくつかご紹介しておきます。なお、補助金制度によっては、以下の記述とは取扱いが異なる場合もありますので、あなたが利用される補助金の交付要綱などをしっかりご確認ください。

1.補助対象期間外の支出

補助対象期間内に発注し、納品を受け、補助対象事業で使用し、費用を支払い済みである経費が補助対象となります。この要件のどれかひとつでもかけると、補助対象経費と認められず、補助金がもらえません。

発注書がないケース

発注書がないと、補助対象期間内に発注したことが裏付けられません。小さな会社の通常の商取引では、発注書を出さない場合が多いでしょうが、補助金の対象経費については、発注書や納品書を残しておきましょう。

振込が期間外のケース

補助対象期間内に支払いが完了している必要があります。完了とは相手側に着金しているという意味です。支払いは通常銀行振込ですから、注意が必要です。補助対象期間の期限の日に支払う場合、振り込む時間によっては当日の着金とならないことがあります。この場合、着金が補助対象期間後になりますので、その費用については補助金がもらえません。

2.申請書に明記されていない経費

事業はやってみないとわからないこともたくさんあります。申請書に書いたとおりに進むとは限りません。申請書の通り進む方が少ないかも知れません。最初に考えていた方法よりもっと安くてよい方法が見つかったり、思っていたこと以外に余分な費用がかかったりするこのが通常でしょう。事業者の方は、目先の課題解決に一生懸命で、補助金申請書に何を書いたか事細かにおぼえていない場合も少なくありません。

こうした場合は、変更申請書などにより、応募した事業内容の一部変更や補助対象経費の変更を願い出て、それが認められれば、変更後の経費について補助金がもらえます。でも、こうした手続きをせずに、補助金申請書に書いてないことをやったり、書いていない経費を支出しても、それらに対して補助金は支払われません。

やっかいなのは、変更内容について、変更したい経費の支出前に承認を受けることが原則だということです。申請書に書いてない経費を先に支出して、後から変更申請しても、さかのぼって経費として認められない場合があります。注意しましょう。

3.経費の支払い者が採択事業者と違う

ものづくり補助金をサポートしていたとき、社長さまがご自分の個人口座から経費を振り込まれたことがありました。「振込手数料が安いので、普段からそうしている」というのが理由です。これ、アウトです。採択された事業者が支払わないと、補助金をもらえません。社長にしてみれば、会社のお金も自分のお金も一緒、という感覚なのでしょう。それはそうなのですが、書類上認められません。

4.振込手数料の取扱い

振込に関連して振込手数料は、一般的には補助対象経費となりません。普段から、振込先負担で振込手数料を差し引いて振り込んでいると、補助対象経費は、振り込んだ金額から相手負担とした振込手数料を差し引かれます。消費税の割り戻りなどの計算が面倒になりますので、補助対象経費を振り込む場合は、自社負担された方があとの処理が楽です。

5.会社の他の業務と区別できない

補助金の目的によって変わりますが、新規事業などが対象となる補助金ではご注意ください。補助金の対象が、採択された新規事業に係る経費のみの場合、会社の他の事業の経費と明確に区別できる必要があります。他の経費と一緒に発注したりすると、この区分が非常に難しくなります。面倒でも分けて発注して、請求書も支払いも別にする方が、あとの処理が格段に楽です。

補助金の処理を側で拝見していると、社長さまの性格が本当によく分かります。きれいなお金のつかい方をされていると、補助金の事務処理も負担が少ないですが、普段から少しでもお金を節約しようと努力されていると、公的な補助金はかえって使いづらいかも知れません。大切なお金ですから、少しでも節約したい。補助金はできるだけ多く欲しい。お気持ちはよく分かりますが、そのためにかかる手間をコスト換算して、どちらが得か検討してみることも必要でしょう。

補助金をトータルサポートします

当社では、補助金申請書の作成を5社限定ですが、完全成功報酬でサポートします。オプションで、採択後の補助金支出や書類作成の支援も行っています。こうしたご支援を希望される方は、「補助金申請書作成支援サービス」をご利用ください。

補助金申請書作成支援サービス