この記事は、「強み経営シリーズ」第二弾『小さな会社の経営計画』として出版することを前提に書いています。この経緯については
⇒ 次の著作の執筆を開始します
⇒ 書籍を執筆する前に決めておくべきこと
をお読みください。
「持続化補助金」の経営計画
経営計画には、作成や提出を義務づけるものがなく、決まった書式もありません。ですから、さまざまな書籍の経営計画のフォーマットが、インターネット上や書籍で紹介されています。公的な補助金に応募する際には、経営計画の作成が必要な場合が多いです。しかし、その様式は補助金ごとに違っています。
たとえば、わたしが長く担当しているおおさか地域創造ファンド地域支援事業助成金の経営計画には、次のような内容を書く必要があります。
1.応募申請者の概要
2.応募事業の内容
①事業の名称
②事業の概要
③事業の目的や必要性、期待される効果
④事業にチャレンジする経緯、動機、アピールポイント
⑤顧客及び市場及び製品(商品)・サービスの内容・提供方法、特徴・優位性
⑥新規性、革新性、成長性の自己評価
⑦事業の実施体制
⑧許認可等の規制の有無
⑨地域活性化への波及効果
⑩補助金の交付を受けた実績
3.新事業にかかる経営計画(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益など)
4.応募事業の実施計画
5.資金計画
6.助成対象経費の内訳
少ない方で5ページ、多い方だと20ページほどになります。この経営計画はフルスペックです。2013年から公募されて、とても人気が高い「ものづくり補助金」の場合は次のようになっています。
1.応募者の概要等
2.事業内容
①事業計画名
②事業計画の概要
③画期的な試作品の開発や生産プロセス革新の具体的な取り組み内容
④将来の展望
⑤事業計画(売上高、営業利益、営業外費用、人件費、減価償却費など)
3.これまでに補助金又は委託費の交付を受けた実績説明
4.経費明細表
5.資金調達内訳
こちらも10ページ以上は書く必要があります。採択されれば、数百万円の補助金がもらえるのですから、このくらいの手間は惜しまない。あなたもそうですか? しかしこれらの計画は、実は応募事業に関する計画であり、全社的ないわゆる「経営計画」ではありません。プロジェクト計画、事業計画という位置づけです。
ですから、応募事業を一生懸命やっている間に、本業が不振となって、会社が倒れてしまう、というようなことが起こったりします。こうした事例に接したので『採択される補助金申請書の書き方』で「お金目当ての補助金獲得は長期的には大きな損」と書いたのです。
ところが、「小規模事業者持続化補助金」における経営計画の位置づけは、これらの補助金とは異なります。補助金の対象は、「販路開拓に取り組む費用」です。ですから、どのような販路開拓に取り組んで、どのような成果を出すのか、を計画にまとめる必要があります。これが「補助事業計画書」で、わたしが担当している助成金やものづくり補助金における事業計画に相当するものです。「補助事業計画書」は販路開拓の計画なのです。しかし、「持続化補助金」に応募するには、もうひとつ計画を作成する必要があります。それが「経営計画書」です。
この補助制度は、小規模事業者の経営計画に基づく経営を促すことが狙いです。経営計画を作成し、それを実行することで、経営の質や生産性が向上し、企業を繁栄に導くのです。しかし、経営計画にはそれを強制するものがないため、あまり作成されていません。そこで、補助金制度を設けて、経営計画作成の動機づけを国が図っているのです。
まず全社的な観点から、経営計画を作成します。経営計画で明らかになった市場ニーズに対応するよう販路開拓に取り組みます。このような販路開拓の費用を補助するという制度です。他の補助金が、補助対象事業に主にフォーカスしているのに対して、この補助金は、全社的な観点をより重視しています。ここで、この本で取り上げる持続化補助金の経営計画を示しておきます。
この経営計画は4項目からできています。「1.企業概要」「2.顧客ニーズと市場の動向」「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」「4.経営方 針・目標と今後のプラン」です。たった1ページなので、簡単に書けそうに思いますが、いざ書こうとすると、なかなか書けないものです。
この本では、このフォーマットを使って、経営計画の作成方法についてわかりやすくご説明します。
この記事の内容は、『自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」(強み経営シリーズ2): 小さな会社の経営計画』として、12月20日に出版しました。