国が地域金融機関に中小企業融資に際しては、担保や保証だけで判断するのではなく、事業の内容や成長可能性などを適切に評価する事業性評価を求めていること、また、リスクが比較的高い中小企業向け融資を促進するために信用保証制度が設けられていること、そして、信用保証制度を利用した融資が焦げ付いた際には金融機関にも一定の責任を負わせる責任共有制度について、お話ししてきました。
事業性評価と責任共有制度
非上場の会社の場合、情報の適時公開制度というものがなく、お金の貸し手である金融機関とお金の借り手である経営者の間には、大きな情報格差があります。このため、貸し手側ではこうした情報の非対称性をリスクと感じて、融資審査の際には、担保の提供や経営者保証を求めてきた経緯があります。しかし、事業に対する目利き力、コンサルティング力を発揮せよ、ということで、金融機関には事業内容や成長可能性などを適切に評価する事業性評価が求められるようになりました。
国が求めている事業性評価を金融機関が適切に実施すれば、中小企業の破綻リスクも少なくなり、信用保証協会の代位弁済も減り、国の負担も軽減できるわけです。しかし、金融機関が事業性評価を適切に実施しているかを信用保証協会がモニタリングすることは難しい。ここには、行動に関する情報の非対称性が存在します。このため、モラルハザードという問題が生じます。融資先が破綻して融資が焦げ付いたとしても、信用保証制度により信用保証協会が代位弁済してくれるのであれば、貸出先への支援も適当でよい。こうなりがちです。そこで、現在20%と定められている金融機関の負担の上限を最大50%まで引き上げることが検討されているというのです。
負担割合引き上げで想定されること
金融系コンサルティング会社の中には、負担割合が引き上げられると、中小企業向け融資環境が大きく変わる、と主張しているところもあります。根拠は、2007年10月に責任共有制度が導入された直後、中小企業向け融資が厳しくなったことがあげられています。現時点では、どの程度まで負担割合を引き上げるのかは決まっていませんが、信用保証制度を利用する金融機関のリスクは確実に大きくなります。ただ、これが中小企業向け融資にどの程度まで影響するのかは、わたしには何ともいえません。
金融円滑化法が終了する際に中小企業の倒産が激増するといわれましたが、金融庁の指導もあり、円滑化法終了後も金融機関が終了前と同様の対応を続けていることもあり、この予想は幸いにも現時点では実現していません。ですから、わたしとしては、今回もある日を境として突然融資環境が大きく変わることはないと思っています。
事業性評価が高くないと融資を受けられない
しかし、中長期的には、事業性評価と責任共有制度における負担割合の引き上げは、中小企業金融において相乗効果を発揮することでしょう。つまり、事業性が高いと金融機関に評価されないと、融資を受けられないということです。このためには、中小企業経営者は金融機関との間の情報の非対称性を極力なくさなければなりません。
これまでのように、普段は銀行づきあいをまったくせず、お金に困ったときだけ、「お金貸して」と銀行に相談しても、相手にされない可能性が出てきます。経営計画もなしに、「思いつき経営」や「成り行き経営」では、高い事業性評価を得られるとも思えません。
経営の質を改めるときです
その会社の財務諸表には現れていない特徴やその会社が属する業界の魅力、地域における当該企業の位置づけなどを総合的に判断することが「事業性評価」において金融機関に求められています。企業側としては、こうした評価の判断材料を金融機関に提供する必要があります。社長の単なる希望的観測ではなく、キチンとした根拠に基づく資料提供が必要です。この観点からは、株主イコール社長というオーナー会社においても、「経営判断の原則」が今後は、大切になるのではないでしょうか。
また、経営計画は必須になります。「思いつき経営」や「成り行き経営」から「マネジメント」への転換が求められます。経営計画とその実行結果、これに勝る経営資料はないでしょう。こうしたことに取り組んでいくことが、今、求められています。負担割合が引き上げられても直ちにあなたが融資を受けられないということはないかも知れません。でも、一年後、二年後は、そのような状況は十分想定できます。
強み経営をはじめましょう
わたしからのご提案です。当社では、「強みを伸ばしてい一番をめざす経営」を「強み経営」といっています。そのために、「強み経営計画」を策定し、その実行と修正をハンズオン支援します。これが強み経営コンサルティングです。そして強み経営に取り組む経営者のグループが強み経営研究会です。
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