なぜ強み経営という当たり前のことを提唱するのか

経営戦略立案の代表的なツールのひとつにSWOT(スウォット)分析があります。自社内部に目を向けて、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)を洗い出し、事業を取り巻く外部環境に着目して、機会(Opportunity)と脅威(Threat)を識別する。これら4つの要因から戦略代替案を作成する手法です。基本戦略は、強みを生かして機会をつかむことです。

ところで、わたしは、新規事業への取り組みを公的な補助金で支援するプロジェクトに中小企業診断士として長年従事しています。過去8年間で43の新規事業に総額1億5千万円以上の補助金を支給し、支援してきました。新規事業が軌道に乗り、新たな柱に育ち、会社の業績が何倍にも向上した例もあります。しかし、それは残念ながら少数です。

上手くいった会社とそうでなかった会社を比べたとき、改めて強みを伸ばして一番になることの大切さを実感したのです。では、「強みを生かして機会をつかむ」というオーソドックスな経営戦略をなぜ実行できないのでしょうか。

それは、自社の強みを社長が実は知らないことが多いからです。自社の強みを生かした新規事業の成功確率はかなり高いです。しかし、「機会をつかむ」ことにフォーカスした新規事業は、強みとのマッチングが十分検討されておらず、販路開拓が上手くいきません。なかなか売上が伸びず、事業が停滞してしまうのです。

「自社の強み」と一言でいっても、それは千差万別です。また、その形成過程は会社ごとに異なります。経営学ではこれを経路依存性といいます。このため、他社の強みをコピーするのは難しいのです。つまり、強みこそが、その会社にとっての持続的な競争優位性の源泉なのです。

もちろん、自社の強みをしっかり意識して、経営されている社長が多いです。しかし、自社の強みを認識できていない社長もたくさんいらっしゃいます。

国が推進している事業で「知的資産経営」というものがあります。知的資産経営。聞き慣れない言葉かも知れません。ものすごくざっくりいうと、自社の強みを生かした経営を実践することで企業価値を高めよう、という取り組みです。京都府では、これを「知恵の経営」と呼び、独自の取り組みをされています。

わたしは同じことを「強み経営」と呼んでいます。何のひねりもなくそのものずばりの表現なので、インパクトに欠けていますが、今までこのように表現した方がなかったので、「強み経営」という言葉は商標登録できました。

補助金事業での経験から学んだ強みを伸ばして一番になることの大切さを多くの経営者にお伝えするために、「強み経営」という言葉に集約し、提唱し始めたのです。

まだまだスタートしたばかりです。これから事例を多く集め、強み経営の実践フォーマットを開発しなければなりません。一緒に取り組んでいただける仲間を募集していますので、ご興味ある方はご連絡ください。