出口戦略という言葉に初めて出会ったのは、たぶん中小企業診断士試験の勉強をしていたときだと思います。私が中小企業診断士試験を受験したのは、2001年です。診断士制度が大きく変わった年です。
それまで診断士は、鉱工業部門、商業部門、情報部門と3つの専門分野に分かれていたのですが、新制度では部門制が廃止されました。同時に受験制度も変更になり、1次試験の科目も大きく変わりました。
受験科目の一つに、「中小企業経営・政策」という科目があり、この科目は「中小企業白書」の内容から多く出題されます。そこで、中小企業白書を買って、何度も読むというのが当時のオーソドックスな試験対策でした。
私も、「2000年版中小企業白書」を何度も読みました。黄色のマーカーとピンクのマーカー(ちなみに重ね塗りすると、オレンジなります)でマーキングされたり、書き込みのあるこの白書は今も手元にありますが、必死で勉強していた当時が思い出されます。
「中小企業白書」には、毎年テーマが設定され、それについて分析や事例紹介がされています。2000年版では、「IT革命・資金調達・創業環境」が取り上げられています。
この白書のpp.232-3に日米の創業環境を比較した図があります。その内の米国の図を次に示します。(出所:http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H12/Z121-01-00.htm)
この記事を書くにあたり、白書を引っ張り出してきて上図を見てみました。
あれっ?
「出口戦略」ではなく「出口」と書かれているだけでした。では、「出口戦略」という用語は、どこで知ったのでしょうか。
それはさておき、この図を見たときに、出口が整備されアメリカのように有望なベンチャー企業が多く出てくる世の中を夢見たものです。実際には、当時課題とされていた創業環境はかなり整備が進んでいますから、創業環境的にはこの図に近いものになっていると思います。
さて、出口戦略ですが、ウィキペディアによれば「ベトナム戦争時にアメリカ国防総省内で使用されたのが始まり」と紹介しています。元来軍事用語で、経営用語やマクロ経済政策でも使われているようです。経営用語としては、次のように説明されています。
市場もしくは企業の経営・所有からの撤退時に経済的損失を最小限にする戦略を指す。
また、投資において投下した資本を最大限に回収することも出口戦略と呼ぶ。第三者への転売や株式公開などがとられる。
前段の意味は、軍事用語からのストレートな転用、後段は上図に示された「出口」そのものです。
起業時点で、出口戦略を考える方は少ないかもしれませんが、うまくいったときのことと同時にうまくいかなかったときのことも、あらかじめ考えておく必要があると思います。