小規模事業者持続化補助金に限りませんが、補助金に採択される申請書を書くには、【公募要領】をよく読むことが大切です。そこで、小規模事業者持続化補助金の【公募要領】にはどんなことが書かれているか、実際に読んでみましょう。
あなたが営業している地域が、商工会議所管轄なのか、商工会管轄なのかの確認が必要ということについては、「小規模事業者持続化補助金の【公募要領】を読む①」でご説明しました。申請書を書く前に「審査の観点」を確認することも大切です。小規模事業者持続化補助金の「審査の観点」は、大きく3つに分かれています。
「小規模事業者持続化補助金の【公募要領】を読む②」では、3つ内の「Ⅲ.その他」を確認しました。「Ⅲ.その他」によると、常時使用する従業員の数が5人以下の事業者や過去に本補助金の交付を受けていない事業者は優先的に採択されます。該当する方は、ぜひ積極的に利用しましょう。
「小規模事業者持続化補助金の【公募要領】を読む③」では、「Ⅰ.基礎審査」のうち、①必要な提出資料がすべて提出されていること、②「2.補助対象者」(P.32~34)および「3.補助対象事業」(P.35~37)の要件に合致すること、について確認しました。
「小規模事業者持続化補助金の【公募要領】を読む④」では、「Ⅰ.基礎審査」の③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること、及び、④小規模事業者が主体的に活勤し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること、について確認しました。
今回は、一番のポイントとなる「Ⅱ.加点審査」項目について説明します。
加点審査の対象
「経営計画書・補助事業計書について、以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価が高いものから順に採択を行います。」と【公募要領】p.53に書いてあります。加点審査の対象は、経営計画書と補助事業計書です。
経営状況分析の妥当性とは
ひとつ目の加点ポイントは、「自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。」です。これは、経営計画書の「1.企業概要」「2.顧客ニーズと市場の動向」「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」などの記載内容から評価されるでしょう。
自社の強みを適切に把握するには
『自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」』では、次のように書いています。
数年前に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』のヒットで「もしドラ」という言葉が流行し、ドラッカーブームが起こりました。この著名な経営学者が、強みに関して次のようなことを言っています。
誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。(ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)
ですからあなたが考えた「強み」は間違っている可能性があります。また「強み」はひとつとは限りません。3C分析やSWOT分析で「強み」が見つかったら、一旦「強みの候補」としましょう。そして
・それは他社がやっていない、あるいはできない、あなたの会社だけの「独占的」なことなのか?
・それで他社と差別化できるのか?
・それは他社が容易に真似できいことなのか? 真似できない理由は何なのか?
・それはお客様にとって、価値あることなのか?などの問いを自分に投げかけて、チェックしてみましょう。これらの質問をクリアーできたら、その「強み候補」は本物の「強み」である可能性が高いです。
ドラッカーが「誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。」と述べているように、自社の強みを適切に把握することは困難です。そこで頼りになるのが、商工会議所(商工会)の支援です。まずは自分で経営計画を書けるところまで書いて、それから地元の商工会議所(商工会)に相談に行きましょう。
「小規模事業者持続化補助金」では「強み」がポイントなので、相談にいけば「あなたやあなたの会社の強みは何ですか?」と問われると思います。そこで、自社の強みについて第三者的な観点からフィードバックを受けることは、とても有益です。
経営方針・目標と今後のプランの適切性
ふたつ目の加点ポイントは、経営計画の「4.経営方針・目標と今後のプラン」についての評価です。「経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。」と「経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。」というふたつの観点から評価されます。
自社の強みを踏まえているか
「自社の強みを適切に把握している」ことが前提となります。その上で、経営方針・目標と今後のプランが「強み」つながりになっていることが読み手に伝わるか、という点を意識して書きましょう。「強みがあるからできる取り組み」「強みをさらに強化する取り組み」などがわかりやすい例ですね。また、「強みと何か別のものとを組み合わせた取り組み」もいいですね。
市場(商圏)の特性を踏まえているか
これは、顧客視点からの評価となります。経営計画の「2.顧客ニーズと市場の動向」と経営方針・目標と今後のプランが矛盾していないか確認しましょう。
『自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」』では、次のように書いています。
「2.顧客ニーズと市場の動向」で機会を明確にして、それを「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」で捉えるために、具体的にどうするかを「4.経営方針・目標と今後のプラン」に書きます。このように「続化補助金」の経営計画は「強みを生かして機会をつかむ」ことを意識した様式になっています。
「強みを生かして機会をつかむ」ことを「製品/サービス」と「市場」から考えると、大きく4つの方針・戦略があります。
① これまでの製品/サービスをこれまでの市場に提供して、既存顧客の購買頻度を高め、新規顧客を獲得する。(市場浸透戦略)
② これまでの製品/サービスを新しい市場に提供して新規顧客を獲得する。(新市場開拓戦略)
③ 新しい製品/サービスをこれまでの市場に提供して新規顧客を獲得する。(新製品開発戦略)
④ 新しい製品/サービスを新しい市場に提供して新規顧客を獲得する。(多角化戦略)
今回は経営計画書の評価ポイントについて説明しました。
「補助金活用法」と「自分で書ける経営計画」
あなたが過去に「小規模事業者持続化補助金」に応募したことがなければ、宣伝めいて恐縮ですが、ぜひわたしが書いた『採択される補助金申請書の書き方(強み経営シリーズ1): 小さな会社の補助金活用法 』と『自分で書ける「小規模事業者持続化補助金」の「経営計画」(強み経営シリーズ2): 小さな会社の経営計画』をお読みください。
『自分で書ける』は「小規模事業者持続化補助金」の経営計画のフォーマットを使って、経営計画のつくり方をご説明していますので、参考になると思います。