強みをつなぐ事業承継⑤

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事業承継には、3つのパターンがあります。それは、親族内承継、社内承継、外部承継の3つです。このことについては、強みをつなぐ事業承継③でご説明しています。また、親族内承継で留意すべき点については、強みをつなぐ事業承継④でご説明しました。

社内承継の問題

今回は、社内承継における問題について考えてみましょう。社内承継とは、経営者の親族ではない社員に経営を委ねることです。親族内承継が95.8%なのに対して、社内承継は2.7%ですから、割合的にはレアなケースといえます。これも、相談を受けたケースをご紹介します。

ケース3 企業価値を知りたい

創業者である前社長からのご相談です。お子様が何人かいらっしゃるのですが、皆さま、立派な大学を卒業して大手企業にお勤めです。年齢的にも働き盛りで、父親の会社を継ぐつもりはありません。また、父である創業者も、子供に会社を継がせる気持ちはありません。数年前から、会社をどのようにしようかお考えでしたが、古参社員に経営を任せることとし、すでに数年前に社長の座を譲っています。

しかし、株式はすべて創業者とその奥様の名義であり、新社長は株式をお持ちではありません。つまり新社長は代表取締役として会社の経営を行いますが、実質的なオーナーは創業者なのです。創業者としては、新社長の経営について、もう少しアグレッシブにしてくれると、業績が上向くと考えていますが、そのような動きは余り見えません。

場合によっては、外部承継(M&A)も考えていますが、長年勤めてくれた社員が、後を引き継ぎたいといっているので、それを尊重されているのです。しかし、一度会社の価値がどのくらいあるのか、客観的に知りたい。そのようなご相談でした。

ハッピーリタイアが難しい社内承継

このケースには、社内承継において生じるいくつかの典型的な問題が現れています。社内承継の一番の問題は、社長を譲る方のハッピーリタイアが困難だということです。ハッピーリタイアの最低限の条件は、会社借入金に係る連帯保証の解除です。

このケースの場合ですと、工場の土地は社長の個人資産で、それに対して抵当権が付いています。社内承継の場合、承継されるのが幹部社員だとしても、必ずしも十分な資産があるとは限りません。このため、新社長の信用力だけでは、会社の負債を引き継げず、前社長の連帯保証の解除に銀行が応じてくれない場合があります。連帯保証が解除できないと、新社長の経営がまずくて会社が万一倒産した場合、前社長までその責任が及びます。これでは、安心してリタイアできません。

また、新社長の資力が十分でない場合、新社長に株式を買い取ってもらうことができません。株式資産を現金化できない場合が多いのです。「所有と経営を分離する」と割り切って、株式は自分の子供達に相続させることも考えられますが、その際に相続税が発生したり、相続した株式を保有しても、十分なリターンが期待できなかったりします。

社内承継は最終手段

新社長にしても、いつまでも雇われ社長のままですから、自分の会社として心底がんばることが難しいのではないでしょうか。このように前社長においても新社長においても、ベストの状態になりにくいのが社内承継です。親族内承継が難しければ、次に選択すべきは外部承継(M&A)です。この社長もどこかにはそのような思いがあって、企業価値を知りたいとお考えになったのでしょう。

このご相談に対しては、企業価値を算出し、社内承継に係る契約関係を整備し、後継者社長の経営サポートなどを行いました。前社長の思いもあり、一旦は社内承継で落ち着きましたが、将来的には、外部承継(M&A)になるかも知れません。

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