補助金申請書をどのよう書いたら採択されるのかについては、わたしの『採択される補助金申請書の書き方: 小さな会社の補助金活用法』をご参照ください。この本では、「採択されるには、「社長の思いや自社の課題」というテーマを公募要領に合わせて加工する必要があります。そして、加工する時には、2つのことを意識しなければいけません。それは、審査基準を踏まえることと、隠れた「問い」を意識するということです。」と書いています。
これを踏まえて「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」申請書の作り方について考えています。審査項目の「1.適格性」については、必勝!「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」申請書作成法①でご説明しました。また「2.技術面」の革新性について、必勝!「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」申請書作成法②で「革新的サービス」と「ものづくり技術」について確認しました。今回は、「高度生産性向上型」という類型について考えます。
高度生産性向上型とは
「高度生産性向上型」という類型は、今回の補助金で初登場しました。平成27年度補正予算案の概要では
2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援
上記1.の革新的なサービス開発・試作品開発・プロセス改善であって、IoT 等を用いた設備投資を行い生産性を向上させ、「投資利益率」5%を達成する計画であること。
と説明されていたものです。これについては、ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金についてで、次のように説明していました。
「2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援」は、新たに設けられた枠です。「IoT 等を用いた設備投資」が新しい内容となります。「IoT」というのは、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)のことです。といっても、まだイメージがわきませんね。「IoT」自体の定義が世間でもまだ定まっていないので、どこまでが対象 となるかはあいまいなところがあります。
「新たに航空機部品を作ろうとする中小企業が、既存の職人的技能をデータ化すると共に、データを用いて製造できる装置を配置。」という例が示されて います。職人をデータと装置で代替するようなイメージでしょうか。「データ」と「装置」によりサービスやものづくりの生産性を向上させる取り組みと理解し ておけば良いでしょう。
IoT 等を用いた設備投資
「IoT 等を用いた設備投資」はさらにふたつの類型に細分されています。「等」がくせ者ですね。公募要領をみてみましょう。では、「IoT 等を用いた設備投資」とは「IoT を用いた設備投資」または「最新モデルを用いた設備投資」だそうです。「等」とは「最新モデルを用いた設備投資」のことですね。「IoT を用いた設備投資」については、次のようの説明されています。
「IoT を用いた設備投資」とは、本事業において設備投資を行うことで、単に従来から行われている単独機械の自動化や工程内の生産管理ソフトの導入にとどまらず、複数の機械等がネットワーク環境に接続され、そこから収集される各種の情報・データを活用して、①監視(モニタリンダ)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)のいずれかを行うことをいいます。【公募要領】
ざっくり言えば、いわゆる「ビッグデータ」を活用して生産性を向上させるような取り組みですね。
最新モデルを用いた設備投資
また、「最新モデルを用いた設備投資」については、「最新モデル」に該当する条件がふたつ示されています。①②のいずれかに該当すればOKです。
① 一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具:6年以内、ソフトウェア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル
② 販売開始年度が取得等をする年度及びその前年度であるモデル(当該年度に販売が開始されたものであれば、その販売時期は問いません)
①②いずれに該当するにせよ、「最新モデルであることが証明できる書類」を提出する必要があります。どのような書類が該当するかは、事務局に確認する必要があるでしょう。最新モデルの範疇は相当広いですから、数千万円規模の設備投資を検討されている方には、利用しがいのある類型ではないでしょうか。
高度生産性向上型における技術面の要件
「革新的サービス」と「ものづくり技術」における技術面の要件については、必勝!「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」申請書作成法②で確認しました。
「高度生産性向上型」においては、IoT等を用いた設備投資を行い、生産性を向上させ、「投資利益率」5%を達成する取組みであるか。【公募要領】
こちらは、「投資利益率5%」が要件です。投資利益率とは「事業者が策定した投資計画において、その設備投資による 効果(【公募要領】)」とのことです。この類型は、補助上限がなんと3,000万円です。4,500万円以上の設備投資が可能です。これくらい規模の大きな投資ですと、投資の経済性評価を実施する必要があるかも知れません。
投資の経済性評価
投資の経済性評価は、投資によって将来見込まれるキャッシュフローを予測して、それらの現在価値の合計額を算出して、それから投資額を差し引いたもの、正味現在価値(NPV)ですが、これがプラスであれば投資を行うと判断するのが一般的です。正味現在価値法ですね。ところで、「将来見込まれるキャッシュフロー」とは何でしょうか。これはいろいろな呼び方をされていますが、「税引き後営業利益+減価償却費」で算出することが多いようです。
しかし、この補助金においては、「投資利益率」5%が求められています。投資利益率は次の算式から求めます。
投資利益率=「営業利益+減価償却費」の増加額/設備投資額×100(%)
この式においては、分子の「増加額」は「設備の取得等をする年度の翌年度以降3年度の平均額」、分母の「設備投資額」は「設備の取得等をする年度におけるその取得等をする設備の取得価格の合計額」と定義されています。
投資利益率を算出するには、設備投資をすることにより、営業利益と減価償却費がどのように変化するかシミュレーションする必要があります。事業計画書では、次のフォーマットで計算するようになっています。
補助金を有効活用するため
以下の記事もご参照ください。
やるべきコトが明確ですか? → 採択される補助金申請書の書き方①
公募要領を確認しましたか? → 採択される補助金申請書の書き方②
やりたいことを補助金にマッチさせる → 採択される補助金申請書の書き方③
3C分析はやりましょう → 採択される補助金申請書の書き方④
何度応募しても落とされる場合の対処法 → 採択される補助金申請書の書き方⑤
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