強みをつなぐ事業承継③

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多くの小さな会社が直面している問題のひとつが事業承継であること、この問題が待ったなしの状況であることなどを考えてきました。このような問題に直面している小さな会社は、では、どうしたらよいのでしょうか?

選択肢は3つしかありません

人には寿命があります。生物学的な寿命だけでなく、「アートとクラフトとサイエンス」という3つの力が必要だといわれる経営には、個人差はあるでしょうが、「適齢期」があるでしょう。したがって、どんなにそのお仕事がお好きでも、いつかは誰かにその事業を引き継いでもらわなければなりません。

誰に事業を引き継いでもらうか。小さな会社では、3つしか選択肢がありません。ひとつ目は、親族の誰かに引き継いでもらう方法です。これを親族内承継と呼ぶことにします。ふたつ目は、親族以外の社内の誰かに引き継いでもらう方法です。これを社内承継と呼びましょう。最後が、外部の第三者に引き継いでもらう方法です。これを外部承継と呼びましょう。

つまり、事業承継の選択肢は、親族内承継、社内承継、外部承継の3つに限られるということです。

経営者の47.4%が60歳台以上

経営者の平均引退年齢は年々高齢化していますが、『小規模企業白書』によると、小さな会社の場合には、2010年には70.5歳になっています。一方、小さな会社の経営者の年齢層は、『小規模企業白書』によると、次のようになっています。平均引退年齢が70歳ということは、事業承継が差し迫っているのは、60歳台以上でしょう。この年齢層の割合は、このグラフから見ると47.4%あります。つまり小さな会社の約半数が、数年以内に事業承継に直面することになっているのです。

経営者の年齢増

出所:『小規模企業白書2015年度版』

95.8%が親族内承継

経営を引き継ぐ方法は、親族内承継、社内承継、外部承継の3つであるといいましたが、実際にはどの方法が多く用いられているのでしょうか。次の表は「現経営者の事業承継の経験」という『小規模企業白書』のデータを表したものです。これをみると、「親から事業承継した」という経営者の割合が49.1%、また「親以外の親族から事業承継した」が4.0%あり、この両者の合計53.1%が親族内承継を経験しています。

現経営者の事業承継の経験

出所:『小規模企業白書2015年度版』

ところが、このアンケートに回答した5,874人の経営者の内、44.6%は創業経営者です。ですから、残る55.4%の事業承継経験者だけでみると、実に95.8%が親族内承継だということになります。同じように計算し直すと、社内承継は2.7%、外部承継は1.4%となります。

この割合は、わたしが実務で遭遇する事業承継の実態に近いように思います。では、親族内承継ではどのようなことが問題となったり、障壁となったりしているのでしょうか。次はそのことについて考えてみたいと思います。

→ 強みをつなぐ事業承継④

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